「銅の青カビって毒?」

 「昨夜からお腹が痛いんよ。野外バーベキューの時、銅の茶瓶でお湯をわかして飲んだんよ。よう見たら緑の錆が付いていたから、あれが悪かったんとちゃうかい」ある患者さんのお話しです。ちょっと待って、確かもう何年も前に銅の青カビ(緑青 ろくしょう)は無害だと証明されたのでは?
 私の子供時代は確かに「銅の青カビは猛毒だから絶対に口にしてはいけない」と教えられました。昭和四十年代、小学校の理科の教科書には、「金属のさび」という項に「しめり気の多いところに銅を置くと緑色のさびができる。このさびは緑青といって食べると身体に害がある」と記載されていたそうです。お餅などにつく青カビと同じ色をしているので銅製品が緑に変色すると青カビが付いたといいます。でもこれは本当の青カビではありません。銅の単なる錆(サビ)です。1961年と1974年の2回にわたり銅の緑青の調査実験をして科学的に無害であるということが証明されています。銅が水と二酸化炭素の存在下で炭酸銅や水酸化銅ができるといわゆる青錆の色がでます。これが衛生状態の悪い時に出現する青カビの色と似ているので「銅の錆」を「銅の青カビ」と言われ出したのでしょう。銅の青カビは猛毒でも有害物質でもありません。
 ちょっと話はややこしくなりますが、銅や銀といった金属はむしろ細菌やカビの増殖を抑える働きがあります。これらの金属は細菌膜にくっつき分裂・増殖を防ぎます。合成樹脂や布にこれらの金属を混入して抗菌製品として販売され、日常生活で利用されています。銅は人間にとって古代から重要な金属であることを再認識しましょう。